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石津謙介(ファッション・プロデューサー)
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 明治男(83歳)にして、このダンディぶり。紺プレにGパンを見事に着こなしている。1960年代、日本中の若者たちを魅了した『VAN』の創始者は、今も東京・青山で存在をアピールしている。
「日本は今でもファッションというのを、視覚だけの世界だと思っているんだね。だから服装だけでしか見ない。衣食住をトータルとしての文化生活として見ないんだ。“人間が賢く明日を生きる”これが文化なんだよ」
 VAN学校の校長の口ぶりは、相変わらずだ。
「会社が倒産した時にね。僕は小さな下請けさんの債務は、大手に肩代わりさせたんだ。勢いがあった時も、証券会社から、上場すればこんなに株価が上がりますよと言われても、僕は最後まで反対した。結局、一般投資家を騙さなかったわけだ。倒産した夜、成城警察からお巡りさんが二人やってきて、僕を警護してくれた。誰が押し掛けてくるかわからないって言うんだけど、本当は僕が自殺すると思ったらしいんだ。でも、僕は二人とビールを飲んで夜を明かしたよ。やりたいことはやったし、悔いはないなあ」
 かつて、『平凡パンチ』の表紙を大橋歩のイラストがカッコよく飾っていた頃、VANのロゴが印刷されたクラフト袋を後生大事に抱えた、僕たちの青春時代……。あの頃、まぎれもなくこの人は、神様だった。
写真・文 高橋和幸

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