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中田喜直(作曲家)
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 放浪の地で耳にした「夏の思い出」に涙したことがある。日本人の誰もが通過する心の旅。抒情性豊かなめろでぃーが心のヒダを揺する。
 「有り難いですね。自分の作った曲が人に感動を与えるなんて。本人はあまり気にしないで作曲しているのですが・・・」
 音楽は静寂の芸術だから、静寂を理解できない人には音楽をする資格はないと断言する。他人の迷惑を顧みず、大きな音で弾くピアノなどは騒音に等しいとか。
 「常識のない人は文明人じゃないんです。タバコが体に悪いとわかっているのに止められず、辺り構わずスパスパ吸うなんていうのは、おかしいですよね。ですから叙勲を辞退申し上げたのも、人を格付けするなんておかしいと思ったんです。長年、献身的な活動をした看護婦さんのような立派な方が、勲一等なんてもらえないでしょ」
 柔和な表情からは想像できないストレートな「青さ」に、遠き故郷の学舎の匂いを感じた。

 
写真 高橋和幸

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