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コロンビア・ライト(漫談家)
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 「お涙頂戴はダメ!」左右の人差し指で出した“×(ペケ)”サインは、禁煙キャンペーンのCFと同様の仕種だった。
 喉頭ガンにより声帯摘出。今秋、術後初めてビンで高座(末広亭)に上がる。同病の高田真快和尚と組む“ガンファイターズが主に慰問を中心としたボランティア活動とすれば、末広亭はいわゆるプロの場である。客の笑いをとれるか否か、まさしく正念場だ。笑いは同情でとれるものではない。それが、冒頭の“×(ペケ)”サインだった。
「ガンを宣告された時は、頭の中は真っ白。サーッと血の気が引きましたねえ。でも、5分。5分で決めました。声帯とって生きるぞってね。5分間はそれこそ真剣に考えましたよ。声がなくなるってことは、商売の通を絶たれるってことでしょう。でも医者はとらなきゃ死ぬっておっしゃる。僕は生きたかったから」
 声帯を使わない方法で声を出すリハビリを続けている。側に寄れば、われわれと全く変わりなく聞き取れる。高座には超高性能のマイクで臨むそうだ。
「僕自身は、ガンにかかってよかった。それまでの利害中心の人間関係が180度変わったし、言葉の大切さを知ったし、何より人間が柔らかくなった。さすが、僕のかかるガンは“高等”ガンだね」
 がなりたてる昨今のコントより、一言一言大柳こ話す漫談で腹の底から笑えたら、聞く側も本望だ。
写真・文 高橋和幸

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