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市川崑(映画監督)
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 トレードマークの煙草を片時も離さない。今は1日80本にセーブしているとか。
 劇場用映画一筋の黒澤明監督を直球主体の本格派とすれば、市川監督は七色の変化球を操る軟投派と言えるのかもしれない。理由はこうだ。テレビ時代劇『木枯し紋次郎』で男のニヒルさを表現したかと思えば、大原麗子を起用したサントリーのCFで男のロマンと理想の女性像を見せてくれた。古くは’64年の東京オリンピックの記録映画で芸術性を表現している。器用貧乏になることなく、いずれもハイレベル。巨匠と言われる所以である。
 だが本人はいたって気さく。「追いつけ追い越せと、黒さんを意識したこともあったけど、もうあかん……」内外を問わず、先輩監督の作品を研究したという。もちろん黒澤監督の作品も。さらりとライバルをはめる。
 ただ今、10月公開予定の映画『四十七人の刺客』を撮影中。「ハイ!本番」のかけ声。張り詰めた空気の中に一筋の煙がスーツと流れた。
写真・文 高橋和幸

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