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野村万作(狂言役者)
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 南北朝から六百年続く狂言が、歴史の中に蹲ろうとしていたのを、本来の楽しみ手である庶民に返す努力をしたのがこの人である。コーヒーのCMに出演したことで批判もあったが、結果的に“狂言”の格好良さをアピールし、ファンを増やした。
「何でも先鞭をつけるのが好きな性格」と、てらいなく自己分析しているところがこの人の強みでもある。
 自然体の後ろ姿を撮りたいとお願いしたら、突如謡(うた)い出し、舞い始める。この真摯な姿にきっとフアンは魅きつけられるのだろう。
 日本文化の笑いの原点が狂言であるにもかかわらず、ただ単なるお笑いが受ける現在。海外にも精力的に出て行き、西洋劇との交流を深め、火花を散らす。
「少しは努力が実を結んできましたかね」と控え目ながらも、満更ではなさそう。
 こういう世情にあって、日本本来のユーモアを伝承しているという自負心、そして自信が、ビンと伸びた背中に現われていた。
写真・文 高橋和幸

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