-13
沈壽宮(陶芸家)
NEXT⇒
  
 「焼き物も旅をするんですねえ」。感慨深げに、白い顎髭を撫でる。
 氏個人の年代別展を企画した主催者が、作品の行き先を調査したところ、逸品50点のうち12点は海外に流出していたという。
「私の手を離れたら、別の人格をもって歩き出すのです。親父は壽官、故郷は苗代川、とでもいいましょうか……」 先祖は秀吉の朝鮮侵攻の時、薩摩の苗代川(現・美山)に連行された陶工のひとり。以来、約400年、一子相伝で李朝陶芸を継ぐ。
「いやあ随分試行錯誤を繰り返しましたが、結局、答えはシンプルなものでした」と、この朝、窯出ししたばかりの白薩摩透彫壷を眩しそうに眺めた。
 常に“ネクスト・ワンを求める新し好き(ご子息評)。
「息子(一輝)には、“形”にこだわるな、自分だけがいい陶工になろうと思うな、鉄の鎖のように繋げていけばいい、後にいいものができあがればそれでいい、と……」
 遥かなる地にあり、母国韓国名誉総領事として、日韓交流にも努めるシムスーガン。
 悠久の人。
 
写真・文 高橋和幸

CLOSE