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湯木貞一(料理人、吉兆主人)
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  当代一の料亭主人(93歳)自らが、
「今時の主婦は忙しおすさかい、味の素も使ってええんです。ご自分の舌で確かめながらなあ」。懐石料理の頂点を極める人の言葉としては、あまりにも意外……。
「お茶と料理は切れまへん。幽玄な味わい、これが日本料理の真髄やと思います」柔らかな京言葉とは逆に、強いこだわりと信念が見てとれた。それにつけても、一流料亭『吉兆』の利用客は財界人や政治家、幽玄な味わいというものが理解できているのかどうか、
「いや、小林一三(故人)さんなんかは、ほんまによう料理を知って楽しんでくれはりました。箸洗いなんかご自分で考えて、それがまためりはりがあって粋おした」。細く透き通った白い手で頬をなでながらゆっくりと話す。
「最近の女の人の服装見てますと、たまらん時があります。便利になったからゆうても、日本の仕来たりみたいなもんは忘れてもらいとうありませんなあ」
 伝統を重んじながらも決して押し付けがましいところがない。自ら身をもって気づくことが大切と説く。なるほど、これで最初の一言も納得できた。
写真・文 高橋和幸

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