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笠智衆(俳優)
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 「僕は芝居が下手ですからね。
小津(安二郎)監督にも、よく苦情を言われました。『笠さん、いろいろ演ってくれるのはいいが、一番いいのをひとつだけ演ってくれ』と。まあ、これからひとつ勉強してみようか……と思っとるんです」
 この恬淡とした話し振りが、まわりの者を魅きつける。
 役者人生67年。日本映画の歴史そのままを背負いながら、本人はいたって自然体。えらぶらず、くさらず、淡々と。日常生活がそのままスクリーンの中にオーバーラップされている。
 唯一、老人の目を見せたのは、話題が、一昨年亡くなった花観夫人にふれた時……。
「淋しゅうなりました」
 少し丸まった背中から、笠さんの寂しさが伝わってきた。
写真・文 高橋和幸

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